モノ・ショップマガジン 押し!!のブランド COLORS 取材全文


●無いかたちは作る「Air Wallet」

エア・ウォレット3種類

軽くて薄い、エアウォレット3色。

ポケットへの収納例

ポケットに入れても厚みを感じさせない徹底した薄さ

 このエア・ウォレットもVintage Revival Productionsの塩田さんがデザインしてます。とにかくスリムにしたい。軽くて、お財布という感覚を無しにして、カード入れのようなんだけど、でもやっぱり小銭も入れたいしっていうことに挑戦した。普通に考えると小銭入れを付けときに、ジッパーはまっすぐに縫い付けるでしょ。でも、このエア・ウォレットの形状でジッパーをまっすぐに縫い付けると小銭入れの容量が減ってしまうから、ジッパーにアールをつけたい。で、実際、エア・ウォレットもグラビティ・ベルト・ホルスターも、ジッパーはアールが付いてますよね。でも、こんなレール売ってないんですね。YKKにも。で、こっからが塩田さんの凄いところなんだけど、「曲げれねえ?」って。思わないじゃないですか普通、それを手で曲げてると。で、手で曲げたはいいんですけど、こんなジップレールの角度で縫製したことがある革の縫製工場なんかないんですね。なんで彼がこのジップレールを持って行くと、「いや、こんなの無理だよ」大概言われる。だから、それを自分で縫って、持って行って「こうできるから」って縫ってもらったワケです。この縫製ができたことによって、Vintage Revival Productionsだけにしかない小銭入れが完成したんですね。逆にそういうジッパーが実際にあったらアールの角度を調整できないと思うんだけど、自分で曲げてるからこそ、このかたちに合ったアールになる。このジッパーのアーチ形状とかも彼らは全部意匠のパテントを取っています。


エアウォレット

エアウォレットもグラビティ・ベルト・ホルスターも、ジッパーはアールがついてる。


 このジッパーのアールをつけることで、グラビティ・ベルト・ホルスターの場合、ジッパーを開くとき下から上に引っ張れる。ベローンと吊るしたときにジッパーが引き易くなっているんですね。この辺がもうホントに絶妙というか、同じジッパーのかたちなんだけど、エア・ウォレットは容量の面で、グラビティ・ベルト・ホルスターは使い勝手の面でという風に、手段を使い分けてるんですね。

 僕もエア・ウォレット使ってるんだけど、僕のを塩田さんが見たとき、「ちょっと待って秋山さん、これ何枚入れてんの。おかしくねえか、エア・ウォレットなのに」みたいな。たぶんエア・ウォレット最大幅ですよ。フハハッ。このコンセプトからすると、かなりおかしいことになってるんですけど。ハハハハハハッ。僕、アメリカと日本と両方なんで、各国ずつのカードが入っちゃってこんなになってるんですよ。うちのスタッフもみんな使ってますけど、こんな入れてる人はいないですね。日常のものをすべて入れてるのに、もともと世界最軽量、どれだけ薄く財布っていう感覚無しにいけるかっていうところを狙っているんで、財布自体の厚みが無い分、パンパンなのにあっさりした感じで収まってる。


エアウォレット

たぶんエア・ウォレットの最大幅という秋山さんのお財布


 小銭も僕、アメリカのと日本のとダーッと入れてる。やり過ぎなんですよね、ユーロも入ってるし、ドルも入ってるけど、膨らみ感をぜんぜん感じないです。中で広がってペタッとなるんですよね。結構入れても一回シェイクすると結構フラットになる。アールになってることでコインの重なりがよくなってるのか。カードと札が入って、小銭入れも付いてるし、このサイズの中でお財布の機能としては最大限のモノが収納できると。


●素材を知り抜く……いい意味で変態

※こちらの製品はモノ・ショップでのお取り扱いはありません。

 2012年のIFAっていうドイツの家電ショーに行ったとき、向こうでXperiaの持ち方を 革は縫製するものっていう概念をそうじゃなくしちゃう。Vintage Revival Productionsはやっぱりすごいですよ。彼らは、もともと漁船作ってる会社の革好きな人なんですよ。なので(スマホのレザーケースを広げながら)、このかたちって船底みたいじゃないですか。折って包んで使うレザーケースなんです。これ革屋さんに持って行くと、革屋さんから出てくる発想じゃないって。「これどうなってんだ?」みたいに、革屋さんが聞いてくるぐらい。


折って包んで使うレザーケース

折って包んで使うスマホ用レザーケース


 このスマホケース、構造的にもすごいんだけど、それだけじゃないんですよ。やっぱり塩田さんって革のことにものすごい精通してて、じゃないとできないかたちなんです。革の話なら何時間でも平気でできる人なんだけれど、だからといって革のブランドだけじゃなくて、磨きや光沢や折れ方とか、もっと違うアプローチの仕方で革を見てます。イタリアのブッテーロだとかリスシオとかもそうなんだけど、大抵の革屋さんは「すごい」って言う。でも、そこから導き出してプロダクトにするまでの経過が違う。視点が違うんですね。こういうケースを革で作ると縁がスマホにピッタリ付かずに浮いちゃう。あらゆる革を試したけど、革を漉いて薄くするとスマホを入れたときにどうしても縁が浮いちゃって袋みたいになっちゃう。ものすごいダサイ、カッコわるいと。で、それが抑えられてビシッといくのは「オイルがダブルで染み込んでるブッテーロだけしかできないんだよ、これ」って。わかります? 革好きで「ブッテーロだからすげえだろ」って言ってることは一緒なんだけど、そこまでのアプローチがVintage Revival Productionsはまったく違うんですよ。革をどこまで熟知してるか、どこまで耐えられて、どういう効果になるのか。彼らのデザインはマテリアルのよさを知り抜くことから出てきてるんで。デザインありきでイタリアンレザーだからいいだろう、日本のレザーだからどうだろうってことではないという。革好きの人が「革だぜ」って持つようなアイテムとは違いますよね。「経年だろ」「味だろ」っていう、いわゆる革の王道とは違う。

 ここが塩田さんと非常に話が合うところで、僕も木をそういう活かし方してるし、職人さんに「木にしかできないことをしたい」「限界値をやってくれ」とは頼んでも、職人さんが思っている無理をさせるようなことはお願いしてないんですよ。やっぱり素材が好きだからこそ、素材をわかった上での活かされるモノのデザインに、方向性にいかないと意味ないよねっていう。このレザーケースの場合、全部のコバを磨いてるんですよ。たぶんそこまでしなくてもいいんでしょうけど、やっぱりブッテーロという革を使うと、経年でどうしてもコバが毛羽立つんですよ。「それはいやだ」と。気づいたら毛羽立ってるっていうのがみっともないと。「だからうちは全部コバ塗りしてんだよね」って言って。「馬鹿みたいだって言われるし、手間を考えたらその工程の費用を省いた方がいいんじゃないかって言われることもある。けど省けない」と。彼らのそういうところが、僕なんかが一緒にやらせてもらって、いちばん気持ちいいとこなんです。

 持って来るモノ、持って来るモノ、カッコイイとかそういうことよりも、ちょっと普通のロジックから出てこない発想で。もちろん別の観点から見れば、縫製したら高くなるし、工程増えるし、外注出るしって言い方もできるんですけど、そこじゃないんですよ。いかにピターッと仕上げるかっていう方向性から、ブッテーロならいけんじゃねえかってところからきてる。カッコイイですよホントに。そうだからこの話をしたあとに彼らを革の変態って言っても、いい意味で変態だってことがわかっていただけると思うんですけど。


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